平成19年第5回定例会(第4日 12月12日)

相崎佐和子(1回目の発言)

 公立保育所の民営化について質問をいたします。 
 初めに申し上げますが、この課題について多くの方がなぜ民営化がいけないのか、民間でも問題がないし、それで経費が浮けばよいのではないかと感じておられるように思います。市民の方初め職員の方も議員の方でもそうかもしれません。しかし、実際に問題は山積です。それは基本的に実態を全く考慮せずに、財政ベースのみで進んでいるからです。ひずみが噴出しています。そういった問題の数々について、余り表明されていないために、御存じないという方が多いのが現状です。まずは、公立保育所民営化の問題点を広く認識し、考えてほしいという思いもあり、今回質問をさせていただきます。要するによくお聞きいただきたいということであります。
 
 では、1つ目の質問にまいります。福祉分野への市場原理導入についての伊丹市の見解はということです。まずは大きなところでの質問です。 
 御存じのように、保育所なる施設は厚生労働省管轄の福祉の分野です。ちなみに幼稚園は文部科学省管轄の教育の分野です。この福祉なるものは、採算性は低く、逆に必要性が高い分野です。コストがかかるわりに収入は少なく、もうけは生じないというのはコムスンの例でも明白になったとおりですが、弱者の救済という意義において、必ずしっかりと取り組まなければならない分野です。だからこそ福祉は公が責任を持って実施すべきと言われています。ところがバブル崩壊以降の日本において、ネオリベラリズム、新自由主義なる考えが台頭をしてまいりました。これは財政危機の主な原因は福祉にあるとして、公的責任よりも市場原理を優先するという経済第一主義の考えであります。この思想のもとに、特に小泉政権下においてあらゆる分野で市場原理が導入をされたことは御存じのとおりだと思います。もちろん市場原理を導入して事業をスリム化、健全化していくことは大事な視点であります。しかし、打ち出の小づちと言わんばかりにメリットばかりが強調され、デメリットにはふたをされている現状も決して見逃してはなりません。特にすべての分野において市場原理が導入されている傾向は、大きな懸念事項です。世の中には市場原理を用いるべきもの、用いない方がよいもの、また用いてはならないものがあります。立教大学教員の浅井春夫氏も、「市場原理は区別する必要がある。製造業や金融、サービス業などは市場原理を機能させるべき。行政サービスなどは市場原理を抑制しながら活用させるべき。そして福祉などは市場原理を作用させないべき。」と述べています。しかし現在、その区別が非常にあいまいになっています。もちろん天井知らずで福祉のみに財政を投入し続けるのは不可能です。経常的経費において大きな割合を占め、増加傾向にある福祉財政の検討は不可避です。しかし、福祉とは教育や医療と並んで人間が生きていく上で基本となる分野であり、行政はまずこの分野を盤石にする公的責任があります。地方自治法第2条13においても住民の福祉の増進という公の基本的な使命が明記されています。そこで改めて伺います。伊丹市として、この福祉の分野に市場原理を導入していくことについて、どのような見解を持っているのかをまずしっかりとお教えください。 

 2つ目の質問です。公立保育所の民営化は、果たしてベストな案なのかということです。話を公立保育所の民営化に絞ってまいります。この公立保育所民営化の目的は、計画案によりますと保育所待機児童の解消、そして子育て施策全般の充実とあります。なるほどこれらは非常に望まれる課題であります。そしてもう一つの大きな目的は、財政的なことと聞きます。財政は厳しく、特に経常経費をスリム化していく必要があるとのことで、これもまことに重要です。つまり待機児童の解消、子育て施策全般の充実、そして経常的経費の削減という目的には何の異論もございません。そのとおりです。しかし、それをなし遂げる手段として、公立保育所民営化という方法が果たしてベストな手段、最善策なのでしょうか。私はベストではないと考えます。その理由は4つございます。ベストではないと考える1点目の理由は、移行という出来事は実施しないにこしたことはないということです。民営化に際して生じる移行は、一時的なことではありますが、実際には最大の懸念事項になります。いくら対応策に万全を期しますとしても、環境の激変によるダメージをゼロにすることは不可能で、何らかのデメリットは必ず生じます。しかも当事者は大人ではなく、まだみずからの意思を表明することができない小さな子供たちです。実際に民営化された保育所を見て、子供がパニック状態に陥ったり、情緒不安定に陥った事例は数多く報告されています。そもそも子供の施策を進める場合には、子供の権利条約第3条において、「児童の最善の利益が主として考慮されるもの」と明記されています。もちろん民営化をせずとも、春になるとクラスがえがあり、担任の先生もかわります。しかし、移行という事態のダメージの大きさたるや、その比較になりません。保育の引き継ぎという点でも、子供の様子を数カ月伝達すればよいというものではありません。また、保育所はペースダウンが許されない施設です。毎日途切れることなく小さな子供が通っており、民営化で一時機能が停滞しても、徐々に軌道に乗っていけばでは許されません。「保育所は第2の家庭」と言われています。民営化による移行は、親がかわることと一緒です。つまりいくら対応策を講じても、間違いなく生じるであろう子供へのデメリットが大きい民営化は行わないにこしたことはありません。 
 民営化がベスト案ではない2点目の理由は、民営化後、その対象園がよくなる見込みがないということです。仮にもし痛みを伴って移行を実施したとしても、その後その園がよくなっていくでしょうか。平成18年2月発表、伊丹市行財政運営改善計画では、民営化についてこのような記述があります。市民にとってよりよいサービスを効率的に提供できると考えられる場合には、民間部門に事業運営をゆだねる民営化を推進するとあります。つまり、民営化はサービス向上などが見込める場合に行うということです。では、公立保育所の場合、対象園にどんなメリットやサービスの向上あるのでしょうか。本年6月議会の当局答弁でも、メリットが期待できるものと考えるとありました。しかし、そのメリットが具体的に何なのか、その後の文教の協議会や保護者説明会などで繰り返し質問が出たにもかかわらず、明確になっておりません。対象園に具体的なメリットが見込めない、また明確にできないのであれば、行財政運営改善計画にも明記してあるとおり、公立保育所の民営化は実施すべきではありません。 
 民営化がベストな案ではない3つ目の理由は、公立保育所のこれまでの保育実績がリセットされるということです。伊丹市の公立保育所は、他市と比較しても、非常にレベルの高いすばらしい保育を長年かけて実施をしてきました。障害のある子供とともに保育をする統合保育や、また園庭開放、育児相談など地域の子育て事業に深くかかわってきました。民営化は、これらが全くリセットになることです。築き上げた宝、財産がゼロになります。この手のものは一朝一夕で簡単に築けるものではありません。築き上げるには何十年もかかり、失うのは一瞬です。さらに失うものはこういった具体的な取り組みだけではありません。保育の質も失います。これは決して数値ですとか、ペーパー上で示すことはできませんし、マニュアル化もできませんが、しかし、不思議と子供や保護者は肌で感じるものです。形にはあらわれないこれらも失います。 
 民営化がベストな案ではない4つ目の理由は、市民からの強い反発ということです。御存じのように、公立保育所民営化について、強く大きな反発の声が上がっています。保護者説明会では、怒りや不安の声が噴出し、怒号飛び交い、泣き出す方もおられるなど、どの会も大紛糾でした。合同説明会では7時間にも及び大激論となりました。私も対象園説明会、合同説明会、市民説明会と傍聴いたしましたが、保護者の方々の怒りや不安の声は相当なものでありました。担当のこども部は完全に吊るし上げでした。また、12月5日は民営化の白紙撤回などを求める署名と要望書が市長に提出されました。署名数は、おおよそ2万5000人分で、その数の多さには驚くばかりです。もちろん市の施策は市民の声によってすべて決定されるものではありません。しかし、これだけの大混乱はもはや無視できる状況ではありません。反発が強く、市民が不信感を抱き、パニック状態に陥っている計画を強引に進めるわけにはいきません。ちなみに公立保育所の民営化については、全国各地で混乱を招いており、訴訟問題にも発展しています。裁判になったのは、横浜市、神戸市、大東市、枚方市、高石市、川崎市、練馬区、板橋区など、数えられないほどです。そして一方的な計画の実行などに対して、自治体側が賠償金の支払いを命じられるなどの事態になっています。これだけの不満が全国各地で爆発している公立保育所の民営化は、明らかに国の失策です。伊丹市でもこのような事態に陥る恐れが多大にあります。 
 るる申し上げましたが、2つ目の質問は、待機児童の解消、子育て施策全般の充実、経常経費削減という目的に異論はないが、その手段として公立保育所民営化が果たしてベストな案なのかと、デメリットが多く、必要性が低く、痛みが伴う公立保育所民営化が最善策なのか、述べてまいりましたベスト案ではない4つの理由も含めてお教えください。 

 3点目の質問に移ります。他の手段についての見解はということです。 
 では、ベスト案ではないならほかによりよい手段はあるのかということですが、そこで3点御提案します。 
 1点目の方法は、公立幼稚園も含めた総合的な計画をということです。今、伊丹市内の公立幼稚園は、園児数が激減しています。おりからの少子化や保育所ニーズの高まりが原因です。各年齢が1クラスずつ、つまり年少さんが30人以下、年長さん35人以下の園が17園中9園もあり、半分以上もあり、入園希望数も年々減っています。また、4歳以下の子供の総数自体が減っており、今後さらに園児数が減少することが予想されています。そこで平成14年から伊丹市において、公立幼稚園の適正規模、適正配置が統廃合も含めて検討をされてきました。ところが最近、統廃合は当面見送るというような方向性を耳にいたしました。もしそうであればニーズの高まる保育所は民営化を強引に進め、園児が減少し続ける幼稚園は統廃合を見送るのは、整合性に欠けています。また、幼稚園は教育が重視されて議論されており、保育所は財政が重視をされて議論されているのも整合性がありません。もちろん伊丹市が誇ってきた1小学校区1幼稚園制は存続していきたいものです。しかし、少な過ぎる園児数は、幼稚園教育に支障をきたしますし、少人数で公立幼稚園1園を運営していくのは経費的にも見直しが必要です。そこで保育所と幼稚園を就学前の子供たちと、総合的にとらえて検討を進めることが大事です。そうすれば幼稚園の跡地に幼保一体型の施設を導入することも可能で、幼稚園の課題も、保育所の課題も一気に解決へと進めていけます。もちろん簡単ではないことは存じています。幼稚園と保育所が管轄が違いますし、幼保一体型の導入なども課題が多いと聞きます。しかし、それは単に行政側の問題ですよね。幼稚園児も保育園児も在宅の子供も、同じ就学前の子供であり、総合的に検討していくことで、よりよい施策を打ち出していけることは間違いありません。 
 2点目の方法は、公立保育所の定員削減案であります。現在の公立保育所は、どこも比較的大規模です。待機児童解消のため可能な限り子供を入所させているためです。これは多くの点で問題があります。第一、保育に余裕がありません。狭い敷地内に多くの子供がひしめいている状態は、保育上好ましくありません。火事などの災害時に対するリスク回避にも不安があります。そんな状況も含め、公立保育所の定員を削減する施策を提案します。公立保育所の現在の定員を徐々に削減していき、その分新しい民間保育所を増設することで対応します。子供の移動は新規の公立保育所への入所を制限するという方法でもってスムーズに実施をします。この案ですと、民営化でなく、定員削減という方法で公立保育所の経費をスリム化できます。保育士の移動と人件費削減も、民営化案と同様に行います。民間保育所の増設は、民営化案でも実施する計画なので変更はございません。何より大きな痛みを伴う民営化を実施しなくとも、先ほどから述べている目的を実行することが可能だと考えます。ぜひテーブルに上げていただきたい案です。 
 そして3点目の手段は、他の財源の見直しであります。伊丹市が行財政運営改善計画などでもって、あらゆる分野で財政健全化を図っていることは十分理解をしております。しかし、まだ見直せる余地があります。方向性を示唆しますと、人は生きていく上でプラスアルファの事柄はさらに見直せると考えます。福祉や教育、医療の分野は、人が生きていく上で冷静になることで、もしあした停止をしたり、後退をしたりすると、たちまち生活に困難を来す人が生じる事柄です。しかし、あえていうと文化的なことなどは、人が生きていく上でプラスアルファになることであり、あす突然停止や後退しても生きていけなくなるということはありません。もちろん私も文化が衰退していいとは思っていませんし、文化の香り高い伊丹市に誇りを持っておりますが、しかし、優先順位を考える際に、人が生きていく上でベースとなる事業は、最後のとりでにしなければなりません。この視点で再度財政を見直すと、公立保育所民営化より先に実施できる事業が存在することは間違いありません。るる申し上げましたが、3点目の質問は「これらの手段についての市の見解は。」ということです。お答えください。 

 そして4点目の質問です。民間保育所への充実策への見解です。よく民間でもよい保育所は多い。どうして民間がいけないのかと聞かれます。当然すばらしい民間保育所は多く存在します。私も子供を預けている保育所は民間であり、保育所に大変満足をしています。民間保育所を否定する考えはございません。では、民間の何が問題なのか、それは保育所の人件費が低く、労働条件も悪いことが一つだと考えます。民間の保育所も認可をとれば国から補助金が出ます。しかし、運営を行っていく上での最低基準額となっています。当然、保育士の人件費も最低限しか補助されず、民間施設給与等改善費なる是正措置はあるものの、上限は12%で勤続年数10年以上は全く昇給しないというのが現状です。この状況では民間保育所では低い額の時給で勤務する非常勤の若い先生がふえ、しかも数年で退職するという事例を引き起こしています。伊丹市においても、保育士の平均年齢は公立37.5歳に対し、私立、民間は28.2歳、また、勤続年数は公立15.6年に対し、民間は5.2年で3分の1年になっています。また、民間は勤続年数が1年以下の保育士が何と3分の1以上を占めています。こういった人件費における極端な削減や労働条件の低下は、保育士のモチベーションや定着率の低下、人材確保の困難という状況を招き、保育の質を向上させるどころではなくなります。例えばアメリカでは保育士の離職率が保育の質の指標になっているぐらいです。保育士は専門職です。頭数がそろっていればよいというものではありません。年齢構成もバランスが必要です。子供と元気に遊べる若い先生から、自身も子育ての経験があり、育児相談にも乗れるベテランの先生まで必要です。ちなみに先日、新聞の折り込みでアルバイト募集の情報チラシがございました。ファーストフード店の定員や工場のこん包作業員などの募集の中に、近隣のある市で民営化された保育所の保育士募集の案内が情報がございました。見ると、時給850円で、経験がなくてもよいとのことでした。キャッチコピーに未経験でもOKと書いてあり、そんな軽々しいものかとがっかりしました。ただ、子供と一緒に私たちも成長しましょうとも書いてあり、いや、先生は先に成長しておいてくれと思いました。大いに不安を感じました。育児学が専門の、元東京大学大学院教授汐見稔幸氏は、このように述べています。「コストカットをしながら質を維持できているのは、ごく一部の園、それも保育士の長時間労働など犠牲的努力によってやっと成り立っている。1、2年はそれで頑張れても10年は続かない。コストダウン主眼の民営化が広がれば、結果的に保育の質が低下しかねない。」と述べています。これらの課題に対応するには、法律で基準値が決まっている以上、市単独で助成を充実させる方向性が望ましいところです。もちろん市の財政に余裕はありません。加配などの補助を実施していることは評価しております。しかし、方向性として、民間保育所の人件費に対する市単独補助金の充実を検討することは極めて重要です。それを行わずに公立保育所を民営化する案が出ています。非常に厳しい財政状況で運営を行う民間保育所をこれ以上ふやそうというわけです。民間がいけないのではありません。民間の充実が必要なのです。この互いに対して市の見解をお答えください。 
 以上、まずは1回目の質問といたします。 


こども部長(答弁)

構成される「伊丹市立保育所民営化計画に関する懇談会」を設置し、本年6月に提言書が提出されました。 
 この提言書では、統合保育を初めとする、これまで本市の公立保育所が担ってきた役割の重要性や、私立保育所へのノウハウの伝達の必要性を踏まえると、「現時点での全園を対象とする民営化の推進は困難である。」との指摘がされました。これを受けて、市として民営化の具体的な手法について検討を行い、本年10月に「伊丹市立保育所民営化計画(案)」を作成し、これまでに公立保育所の保護者の方々を対象として、各公立保育所及びつつじ学園、きぼう園において説明会を実施するとともに、広く市民を対象とした説明会を実施しました。また、あわせてパブリックコメントについても現在募集しているところであります。 
 まず初めに、市の福祉に対する見解や方向性と、福祉分野に市場原理を導入することについての見解についてお答えいたします。 
 今、人口減少化にあって、子供たちから高齢者の方々まで、だれもが個人の尊厳を持ってその人らしい自立した生活が送れるよう、社会全体で支え合うための安定性と、信頼性の高いシステムを、行政が責任をもって構築していくことが求められています。そうした中、国において平成11年に打ち出された「社会福祉基礎構造改革」における「利用者の立場に立った社会福祉制度の構築」、「サービスの質の向上」、「社会福祉事業の充実と活性化」、「地域福祉の推進」といった目指すべき方向性に沿って、各種福祉サービス利用に係る措置制度の契約制度への変更や、利用者権利擁護や苦情解決制度を初めとする、利用者保護制度の導入、サービスの外部評価のための第三者機関の育成、多様な事業主体の参入促進、市町村等における地域福祉計画の策定などの改革が進められてきました。 
 本市におきましても、市民一人一人が自分らしく生き生きと輝いて、人生を過ごすとともに、安全で安心して心豊かに暮らすことができる地域社会の形成へ向け、あらゆるステージでの「人づくり」を市政の最優先課題として位置づけているところですが、その推進に当たっては、さきに述べた行政に課せられた役割及び各種の制度改革の流れを踏まえ、増大かつ多様化する市民の福祉ニーズを、安定的に満たすため、市民にとってよりよいサービスを効率的に提供できると考えられる場合には、民間活力の導入を進めるべきとの考え方に立ち、各種施策を展開しているところでございます。 
 次に、2点目の公立保育所の民営化は果たしてベストな案なのかという御質問についてお答えいたします。まず、議員御指摘の保育所の経営母体や、保育士がかわることに懸念される子供へのデメリットについては、計画案でもお示しさせていただいているとおり、移管先法人として保育所運営の実績がある社会福祉法人を対象とすることや、移管に際して十分な引き継ぎ期間を設けること、移管法人に対して雇用を希望する移管対象保育所の非常勤保育士等の継続雇用を要請すること。また、保育内容、行事などの保育環境の急激な変更を避けること等により、必要かつ十分な対応をとってまいりたいと考えておりますので、御理解賜りますようお願いいたします。 次に、民営化によるサービス向上などのメリットを、具体的に提示すべきとの御指摘についてでありますが、市としましては、移管対象保育所の保護者ニーズに応じて、民間の独自性や柔軟性が発揮され、特色ある保育や、多様な取り組みが必要であると考えておりまして、具体的には延長保育、自園型の病後児保育、年末年始の保育などが挙げられるのではないかと想定しておりますが、今後も保護者説明会や移管対象保育所の保護者との話し合いを十分に行っていくことで、ニーズを十分に確認し、移管条件に盛り込みながら、法人選考に当たっていきたいと考えております。 
 3つ目の理由として挙げられております公立保育所のこれまでの実績がリセットされるという点につきましては、公立保育所の民間移管に当たっては、懇談会提言書にもあります、これまで本市の公立保育所が担ってきた役割の重要性を踏まえ、統合保育や地域子育て支援の経験やノウハウを私立保育所に円滑に引き継いでいくための体制の確保という観点から、市全体の公立保育所の配置状況を勘案した上で、2園を対象としているところでございますので、御理解を賜りますようお願いいたします。 
 4つ目の、保護者の方々から強い反応がある状態で、強引に進めるべきではないという御指摘につきましては、11月6日より公立保育所の保護者の皆様に、計画案の説明をさせていただきましたが、各園の保護者の皆様からは、計画案に対しまして、多くの御意見並びに不安の声などが寄せられました。今後とも引き続き保護者の不安の解消への努力はもとより、保護者を初めとする市民の皆様への説明責任を果たしてまいる所存でございますので、御理解と御協力を賜りますようお願いいたします。 
 次に、3点目の他の手段についての御提案のその一つ目の、公立幼稚園も含めた総合的な計画につきましては、現在、教育審議会では少子化、核家族化、女性の社会進出が進行する中、公立幼稚園の園児数も減少傾向にあり、集団の中でのさまざまな遊びや、体験を通じた子供たちの健やかな成長に向けた教育環境をいかに確保するかという課題を受けて、まずは教育的見地から、公立幼稚園の適正規模、適正配置の審議がなされております。これと並行して、伊丹市福祉対策審議会と学校教育審議会の合同部会において、本年2月から認定こども園や幼保総合施設を含む今後の就学前児童施策のあり方について審議され、現在、事務局において年内の報告取りまとめに向けた作業を行っているところであり、この報告を受けて、今後、両審議会において審議がなされる運びとなっております。 
 次の、公立保育所の定員削減案につきましては、公立保育所の存続、並びに保育環境の向上の点から御提案をいただいたものと考えております。しかしながら、例えば保育所定員を徐々に削減した場合におきましては、1園を移管することに対して、その財政効果が少ないことにあわせまして、相当な期間を要することが考えられます。また、何よりも保育所待機児童を抱える中で、民間保育所の設置とあわせて、公立保育所の定員削減を図ることにつきましては、市全体の保育所配置状況を踏まえた民間保育所設置のための土地等の取得問題が課題であり、その実現は現在のところ困難であるものと考えております。 
 3つ目の、他の財源の見直しにつきましては、議員も御承知のとおり、本市におきましては全庁的な行財政改革の取り組みとして、平成18年2月に策定した伊丹市行財政運営改善計画に基づき、内部努力による人件費総額の縮減、民営化・民間委託化の推進、ゼロベースからの事務事業の見直し、地方公営企業の経営健全化、地方公社等の経営健全化、さらには積極的な財源確保といった項目を柱として、本市の行財政運営の具体的な改善に着手いたしました。特に議員御指摘の事務事業の見直しにつきましては、行政評価に基づく事務事業の見直し、補助金総額の縮減、新規施策・投資的経費等の重点化といった方向性で、一から見直しを行い、福祉医療制度の見直し、敬老祝金給付事業の見直し、電子入札制度の導入等の具体的な見直し項目を掲げ、実行してまいりました。こういった全般的な見直しの中で、教育、医療、福祉の分野においても、限られた財源を必要な市民サービスへの対応に適切に配分するためには、すべての事業について、常に健全化に視点を当てることが肝要であり、それらの今日的な役割、効果補足、類似関連施策との整合、効率性、経済性、また受益者負担のあり方など、さまざまな観点からそのあり方について検証すべきとの基本的考えに立ち、公立保育所の民営化といった既存事業の見直しのみならず、子育て支援策の新規・充実施策といたしまして、「こんにちは赤ちゃん」事業の実施、「むっくむっくルーム」の開設、私立保育所における統合保育実施のための保育士配置に係る財政支援、子育て支援医療費の拡充、来年度からオープンいたします「阪神北広域こども急病センター」の整備等に、積極的に取り組んでいるところでありますので、御理解賜りますようお願いいたします。 
 次に、4点目の民間保育所への市補助金増額についての見解に関する御質問にお答えいたします。民間保育所の運営経費につきましては、児童福祉法による保育所運営費国庫負担金についての通知により、定められた運営費と特別保育事業の補助金、市からの運営補助金があり、これらにより保育所運営を行っていただいているところでございます。議員御指摘の、国が定めた運営費が低いため、民間保育所の運営を圧迫しているのではという点につきましては、市としても十分認識しており、全国市長会や近畿ブロック都市福祉事務所長連絡協議会などを通して、これまでよりその増額をたびたび国に要望しておりますが、改善されない状況が続いております。また、国の運営費算定は、児童福祉施設最低基準に基づく人員で計算されているため、各自治体におきましては、それぞれ単独で民間保育所の運営維持のための補助金を設けております。昨今の近隣自治体の民間保育所補助金の状況を見ますに、財政難により、こういった補助金を減額するケースや、逆に子育て支援として増額する自治体も見られます。本市といたしましては、民間保育所に対しまして、これまでより公私間の格差是正として、国基準を超える加配職員の補助を行っており、また、平成19年度より1歳児や障害児に対する加配保育士の補助を新設し、市としての保育の向上を推し進めているところでございます。 
 いずれにいたしましても、公立保育所民営化は、公立保育所の財源を再配分することにより、すべての子供が健やかに育つ環境づくりを目指しておりますので、民営化することにより、民間保育所に対するこういった支援や在宅子育て支援の充実が図られるものと考えておりますので、よろしく御理解賜りますようお願いいたします。 


相崎佐和子(2回目の発言)

 お答えをいただきました。しかし、申しわけないのですが、明確なお答えのようではないように感じられてまことに遺憾です。 
 1点目の質問、福祉分野に市場原理を導入することについての見解は、福祉ニーズに対応するためにも民間活力を導入していくとのお答えでありました。しかし、今、議会で質問が相次いだ病院問題も同じですけれども、可能な限り公が運営していこうという方向性と努力が必要です。その方向性が伺えずに、大きな不安を感じました。ちなみに1回目の発言で申し上げたネオリベラリズムに基づく経済第一主義の施策展開は、イギリスのサッチャー政権や、アメリカのレーガン政権などが有名ですけれども、いずれも社会にひずみを起こして失策であったと評価されていることをお伝えします。 
 そして2点目の質問、公立保育所民営化は、果たしてベストな案なのかについてですが、これに関しては明確にお答えをいただいていなように思っております。そしてベスト案ではない理由、その1の移行はデメリットが大きいことについては、対応策を万全に期すとの答えでしたが、それに無理があると申し上げております。それに子供へのデメリットを認識しているという文言はなく、言外からも感じることはできませんでした。同じような説明で保護者説明会でも繰り返されていましたが、これでは保護者が怒りや不安を感じるのも当然です。 
 理由その2の、対象園にメリットがないことについては、これからメリットを移管条件に盛り込んでいくとのことですが、先に明確化をして、計画案に盛り込むべきです。これでは空手形です。 
 理由その3の、これまでの保育実績のリセットについては、民間に円滑に引き継ぐために2園のみ民営化をするというお答えでしたが、対象園の保育実績のリセットが問題と申し上げておりまして、問題がすり変わっているように思います。 
 理由その4の、市民の反発が強いということについては、今後も説明責任を果たしていくとのことでした。しかし、今の説明では、何度行っても平行線ですし、また、今後も説明を重ねていくということであれば、今のかつかつのスケジュールではその期間はありません。スケジュールをおくらすよりほかにないように思います。 
 そして3点目の質問、他の手段についての見解はということです。1つ目の公立幼稚園との総合的な検討については、現在、審議中または答申待ちとのことでした。それならば保育所民営化もその答申を待つべきです。また、保育所と幼稚園が双方に課題を抱えて、一緒に検討していけば、よりよい方向性が広がっていくことが見えているのに、あえて保育所民営化のみ先に進めるのは、施策として有効ではありません。 
 2つ目の、公立保育所の定員削減案については、何度も申し上げておりますように、幼稚園と総合的に検討すれば跡地活用することもでき、お答えにありました困難ということは、決してございません。 
 4点目の質問、民間保育所に対する市単独補助の充実につきましては、そのために公立保育所民営化を実施するとのことでした。しかし、なぜ同じ子供というカテゴリーの中で財政をやりくりするのでしょうか。また、運営の厳しい民間保育所をさらにふやすことについては、課題が増大するばかりですが、これに関してはどうするのでしょうか。 
 これらを含めて、改めて市長に伺います。 
 その1、公立保育所民営化は、ベスト案とお考えでしょうか。簡単で結構ですので、お答えがございませんでしたので、お願いします。 
 そしてその2、提案いたしましたほかのよりよい手段につきまして、市長の見解と検討の余地という点でお答えいただきたいと思います。特に、就学前の子供全体の施策展開という点で、総合的に検討が必要と考えますが、その点での市長の見解もお聞かせください。 
 そして、時間がありますので、もう1点質問いたしますが、市長の市民へ説明責任や、さらなる検討ということを考慮しますと、今のスケジュールでは無理のように思うのですが、その点もお聞かせいただければと思います。 
 以上2回目の質問といたします。


市長(答弁)

 保育所民営化に関するお尋ねにお答えさせていただきたいと思います。 
 保育所民営化についての考え方、私の考え方につきましては、昨日の高塚議員、中村議員の御質問にもお答えさせていただいたところでありますけれども、要は、私としましては伊丹の未来を託す「人づくり」、これを重要施策として取り組んでまいりましたし、今後も取り組んでまいりたいと思っております。そうした中で、子育て支援策の充実でありますとか、教育の質的向上を図るという観点から、財政状況が厳しい中ではありますけれども、大所高所から将来を見据えた施策展開を図っていくことが大切と、このように考えているところであります。 
 議員は、保育所の民営化に疑問を感じておられるようにお聞きいたしましたが、従来から私どもとしましては、保育所待機児童の解消に向けて、保育所の新設、増築、こういったことの定員増加を図ってまいりましたが、まだまだ待機児童は発生しておられますし、今後も女性の社会進出等考えた場合には、必要があるのではないかと思っております。 
 また、療育支援でありますとか発達支援の充実も、これまた必要であろう。さらには保育所に預けていない方、在宅の方であっても、核家族化などによりまして、子育てへの不安でありますとか、負担感を感じている御家庭も多い、さらには児童虐待といったような、ゆゆしき問題も生じておるというようなことで、子育てに力を入れていきたいと申し上げましたけれども、現状、多くの課題が山積しておるのも事実でございます。 
 こうした中で、保育所につきましては、議員も御存じのとおり、公立、私立がそれぞれありますけれども、一定の基準に従った保育水準を保たれる中で、本市におきましてもそれぞれ保育に取り組んでいただいているところでありまして、こうした一部公立保育所の民営化によりまして、それを社会福祉法人に運営していただくと、そしてそれによって生じる財源や人材を、先ほど申し上げました懸案となっておる子育て支援対策に当てるということについては、市民の皆様方、多くの市民の皆様方に御理解いただけるのではないかと考えておるところではあります。 
 ただ、議員からも御指摘いただきましたように、きょう時点ですべての市民の方に理解いただいているかということから申し上げますと、御指摘のとおり、保育所の保護者の皆様方を中心に、不安の声でありますとか、反対の御意見についてもいただいていることは事実でありまして、課題とされております公立から私立への移行に当たっての引き継ぎを十分に行う。子供たちへの影響が出ないような対応を図る。そして保護者の皆様の不安解消に努めるということは、大切なことかなというふうに思っております。したがいまして、今回の民営化計画につきましては、私ども市といたしまして、先行しております自治体の取り組み事例を参考にしながら、総合的な見地に立ち策定したものでありまして、議員からも御提案もいただいたところでありますけれども、議員からの御提案については、先ほどこども部長から申し上げましたような、さまざまな課題もあるのかなというふうに思っておりまして、こども部長から申し上げました課題について、何らかの対応をお考えであれば、御教授いただきたいとは思っておりますけれども、現時点ではなかなか難しいのかなと。そういうことで現計画案を基本としつつ、今後、公募者の御意見でありますとか、パブリックコメントによる御意見もいただけるかと思っておりますので、そうした市民の皆様方の御意見を踏まえまして、適切に進めてまいりたいと考えておりますので、御理解いただきたいと思います。 
 ただ、ひとつ、私の市政運営の基本にかかわることでありますので、この機会に御説明させていただきたいと思います。 
 まず、市場原理の問題でございます。議員からはネオリベラリズム、サッチャー、レーガンの時代を引用されたかと思いますけれども、私としてはそういう市場原理主義では全くありませんで、私が伊丹市政におきまして申し上げております民間移管でありますとか、民間委託の推進といいますのは、民というのは、公務員でない民という意味でありますので、広く市民の方も含めた形で考えております。例えばの例で申し上げれば、笹原公園でありますとか、昆陽南公園でありますとか、最近つくっております公園については、計画段階からワークショップで、地域の方々、市民の皆様方の御意見を聞くと同時に、できた後の管理運営についても、緑化、緑の剪定でありますとか除草でありますとか、掃除でありますとか、そういった従来は公物管理という体系で役所が、公務員がやっていた時代もあったかと思いますけれども、これからの時代、市民の皆様にも御協力いただいてやってきたことが、市全体のトータルのコストを低減し、市民の方々の負担軽減にもなり、かつ、住民自治という形でふさわしいのではないかということで考えておりますし、それまでいろいろな市の仕事、公の責任ということと、実際それに、サービスに携わる人が公務員か否かというのは、ケース・バイ・ケースで判断していくべきではなかろうかと思っております。 
 今回この市議会でもるる御議論いただきました、県におきます新行革プランにおきましても、福祉教育の水準を下げることについては反対な意見が多いわけですが、新聞見てますと、県はもっとスリム化できるんじゃないか、反対意見ももちろんありますけれども、どちらかというと、そういう御意見が多いということを考えますと、限られた人件費の中で、市民、県民のサービス水準を維持すべきだというようなのが、県民の強い、大きな意見かなというふうにも、新聞報道から受け取ったわけでありますけれども、本市におきましても、そういう意味で市民の皆様方に対する直接のサービス水準といいますか、伊丹市に暮らすことの水準は決して下げることなくやっていくためには、公務員でなくてもできるところについては、市民の方、あるいは民間企業の方、社会福祉法人の方にお願いすることも考えていくべきではなかろうかという意味で申し上げているところでございます。 
 そしてもう1つ、最初の御質問で、文化をプラスアルファで、経費削減のためには、削減してもやむを得んではないかというような御指摘があったようにも受け取りましたけれども、私は文化というのはプラスアルファではなくて、これからの市民生活に本当に必要なものではなかろうかと思っております。もちろん文化のために福祉を犠牲にするという意味では決してありませんけれども、福祉と並んで文化というのは伊丹で言っております、ことば文化を初めとする伊丹の歴史・文化を大事にして、伊丹に住むことの誇りを、愛着を持ってもらえるというのは、伊丹の文化そのものではないかというふうに思っておりまして、限られた財政状況下でありますから、それほど文化を最優先ということでは決して申し上げるつもりはありませんけれども、文化行政というのも厳しい財政状況下でありますけれども、一定の配慮をしていくべきかなというふうに考えておりますので、御理解賜りたいと思います。